脱走(Update Edition)


5.罠

今の時刻を確認してみると、午後12時11分。いろいろあったため、到着が少し遅れたという。

打保勉は、11年ぶりに東京の地面に足をつけた。荷物(自転車も)をバスから降ろし、自転車に載せ、スマホを再起動した。

母の弟の家に行ったのは11年前で、まったく覚えていない。そのため、このスマホに道案内をしてもらう必要がある。危険はあるが、仕方ない。しかし、ここに最終目的地があるから、心配する必要はあまりないが。

ここは新宿バスターミナル。あまりの人の多さに驚いた。すごいな、と思っているとスマホの再起動が終わった。

僕はGoogleマップを起動し、住所を入力した。すると、瞬時にルートが産出され、案内を開始した。

「ここの信号を左です。」

僕は、言われるがまま自転車を進めた。

今は午後12時27分。

だいぶ暑くなってきたが、ちょうど目的地に着いた。東京のマンションって高いなと思った。

エレベーターを使って上にあがり、目的の301号室へ向かった。よし、目の前だ。ついに僕の新生活が始まる…!

インターホンを押した。しばらくすると、男が現れた。

「誰?」

「あ、あの、打保勉です。ここに住みたいと思い、やってきました。あなたが健介さんですか?」

そう言うと、一気に表情が軽くなった。

「なんだ、勉かー。久しぶり!すごい変わったなぁ。まるで大人みたいだ。」

それは服のせいだろ、と思った。

「ところでさ、今お客さんが来ているんだ。あんたに会いたいんだってさ!」

ん?おかしい…。なぜ学校が始まったばかりなのに来たことを疑わない?それに、客?僕に会いたい?僕の計画は、誰にも知られていないはず…。

その時、心がざわっと波立った。僕の計画を知っているのは、僕以外には警察しかいない。つまり…

これは、罠だ!!

「ちくしょう!」

僕は走り出した。荷物をもって。その時、後ろで誰かが、

「打保勉!」

と叫んだのを聞いた。


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