脱走 Re:RIse(活字版)


エピローグ

「くそっ、勉、どこ行ったんだよ。」

7月30日午後5時。僕、清水春樹は、昨日から行方不明な僕の友達、増田勉を探している。小学4年生にも似たような事があったから、多分家出だと思うが…。

「これだけ高山市内を探し回ってもいないなんて…。」

2日かけて、旧高山市内は全て回った。それなのに、昨日、勉の自転車を見つけたのみだ。

もしかして、もうすでに警察に保護されてるのか?でも、じゃあなぜ僕の送ったLINEに既読がつかないんだろう。

まさか…。最悪の事態が心をよぎったとき。

突然、僕のスマホがなった。LINEの通知だ。

誰からだろう。そう思って、LINEを開くと…。

「あ!!」

なんと、勉のアカウントに、新着通知となっていた。

やっと連絡がついた!一体今どこにいるんだよ。トークルームを開くと、驚愕の内容が書かれていた。

「やあ。いろいろあって、連絡を入れられなかった、ごめんね。まさか、心配してた?僕は、実は、ある家に養子として入ることになったんだ。だから、学校も転校する。でも、もし、僕の家に来たかったら、また連絡してよ。場所とか、いろいろ教えるからさ。じゃーねー。」

な、な、なんだこれ。養子に入った?転校?数学にたけた僕の頭でも、混乱しっぱなしだった。それよりも…。

「いつもの勉じゃない...。」

べん は、冷静沈着、他人に無関心で、こういう連絡でも、必要なことしか伝えてこない。なのに、この勉は、なんか明るいし、不必要なことも書いてるし、なにより一人称が「僕」だ。いつから「俺」から変わったんだ?

「一体、なにがあった…。」

僕は、呆然と立ち尽くしていた。

 

2020年9月1日、午前6時過ぎ。岐阜県高山市丹生川町。そこのある一軒家で、ある男の子と女の子が、部屋で学校の用意をしていた。

「よし、こっちはおわったぞー。花音ちゃんは?」

ある男の子が、女の子に声を掛ける。女の子はというと。

「はーっ、やっと終わった。勉くん、今日は、いつものあれ、まだやってないよね?」

「ああ、そうだね。学校の準備に手間取ったからね。」

「私への愛は忘れないでよ!」

「もちろん、誰が忘れるものか。さ、目を閉じて。」

2人が、接近する。そして。

チュッ。

「...大好きだよ、花音ちゃん。」

「…ありがと。」

「花音、勉ー!ごはんよー!」

部屋の外から、母親らしき声がした。

「じゃ、行こうか。」

「うん!」

2人は1階に降りて行った。

 

6時45分。

玄関に、男の子と女の子、そしてその母親と父親らしき人がいた。男の子と女の子は、制服に着替え、リュックを背負っている。

「それじゃ、行ってきまーす!」

男の子と女の子が、息ぴったりに言った。親も答える。

「気を付けて行ってくるのよ。」

「全部に全力だぞー!」

玄関の引き戸が閉められる。

「じゃ、いこっか。」

「うん!」

男の子と女の子は、手を繋いで、仲良さげに家の自転車置き場へと向かった。


あとがき

みなさんこんにちは、TYPEDです。この小説は、LINE公式アカウントで公開していた創作物語、「脱走 Re:RIse」の内容を活字化したものです。TYPED Officialで公開していた内容そのままに小説化してしますので、この物語自体がコロナ渦になる前に描かれたものであるため、現実には延期になったオリンピックが2020年に予定通りに行われていたり、ソーシャルディスタンスが全く取れていなかったりしますがそこはご了承ください。この小説は、元々「脱走」のリメイク作品として制作されており、最初は「脱走」とほぼ同じ展開だったものが、「柚原花音」という新ヒロインを投入することで「脱走」の世界を破壊し新たなエンドを迎えるという内容になっております。「脱走」とは違う物語であることを暗示するためにあえてメインの登場人物の名前や年代も微妙に変えています。実は題名にもその内容コンセプトが反映されていて、「RIse」の「RI」は大文字にすることで「脱走」と同じ展開、「se」は小文字にすることで違う展開を表しているという小ネタがあったりします。

え?なぜ創作小説再編計画第2作目に、「脱走(Update Edition)」の続編ではなくこれが選ばれたのか、ですって?実は、YouTubeチャンネルにて「脱走」シリーズの新たなリメイク作品を制作する予定があります。つまり、「脱走(Update Edition)」と、「脱走 Re:RIse(活字版)」の公開は、そのための下準備なんですよね。そちらに関しては、続報を気長にお待ちください。というわけで、この作品をご覧いただき、ありがとうございました。


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