脱走(Update Edition)


プロローグ

2015年4月6日。多くの外国人でにぎわう街、岐阜県高山市にある、最近改築されたばかりの新しい中学校、中山中学校に、ある一人の生徒が入学しようとしていた。

名前は「打保 勉(うつぼ べん)」。よく「成績はいいのではないか」との声をよく聞くが、実は彼は成績はとびきり良くはなく、変わり者だ。いつもぼんやりしていて、授業に参加する気がないのではないか、とまで思われているが、かと言って成績は悪くない。何か秘密を持っているという噂もあるが、本人の口から語られることはなく、友達である僕すら知らない。

僕の名前は、「清水 平(しみず たいら)」。先述の通り、僕は変人である彼の唯一の友達。趣味が同じサイクリングだったことから意気投合したが、僕にすべてを語ってはくれない。だから、彼が持っているという秘密も知らない。

彼は変人だが、顔はそれほど変じゃないので、入学式の時に並んでみてもそんなには目立たない。

僕も緊張している。中学生活に不安がある。おそらくそれは、彼も同じだろう。勉強は難しいのか?先生は厳しいのか?他の学校の子と仲良くなれるのか?部活はどうしようか…。考え出すときりがない。

今年入学してきた人数は200人ほど。生徒が増えている中山中でも、その人数は多いのだという。

だが、この日から1年後にとんでもない事件が起こるとは、この時の僕は知る由もなかった。


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